つづり

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In Stars And Time 感想

以下でIn Stars And Timeの内容に触れている。

In Stars And Timeは主人公のシフランがラスボスを倒すまでの過程でループを繰り返すゲームだ。
序盤から終盤まで物語の進め方がすごく丁寧だった。ゲームとして遊びやすくなるように工夫がされている。絵柄がかわいらしくてキャラクターの言動に合っている。
物語が丁寧だけど、結末はあっさりしていた。結末自体は納得のいくものだったから、もっとシフランのことを知りたいし、解決されない謎のことも知りたかった。

既に聞いた話をとばすときに右側にシフランの絵が出てきて、最初はうんうんと首を動かしてうなずく動作があったけど、しばらくするとそれすらしなくなったところが細かいなと思った。ループを繰り返していくうちに周りの出来事を流れ作業のように扱っていくのがこういうところからもわかるようになってる。

ループの途中で友情や愛情の力ではループを終わらせることができない展開があるんだけど、そこがよかった。逆に友情や愛情でループが解決できたら興ざめなので、そうじゃなくてよかった。

物語の最後の最後で、またループして最初に戻ってしまうのではないかと不安で手をつないでほしいと思っていたら、ゲーム内でキャラクターが手をつないでくれたので、プレイヤーの不安を想定済みだから、なんて行き届いたゲームだと思った。

シフランとイザボーはSiffrinとIsabeauと書くらしい。フランス語圏の名前なんだろうか。オディールは白鳥の湖のオディールから来ているのか?白鳥の湖ってドイツが舞台らしいけど、オディールってフランス語っぽい響きがする。ドイツ語は全然わからないからその辺はよくわからないけど。

多分ミラベルはアセクシャルでアロマンティックなんだろうと思うけど、ミラベルが悩んでることを聞くとき、ミラベルと同じように悩んでる人が辛くならないといいなと思った。「~すべき」という抑圧は辛いし、今の世界ではどこからでもそういう圧力がかかる。したくなければ恋愛や性的な行動をしなくてもいいし、そうする必要はどこにもない。
シフランはアセクシャルでグレーロマンティックなのかな。性的な行為はしたくなさそうだけど、恋愛感情はありそうだから。そのあたりの設定はわからないけど、アセクシャルって一言で言っても人によって色々あって、そういうのを描写してる作品は少ないなと思った。
作品の中にアセクシャルがひとりだけ脇役として出てくる作品ではアセクシャルの話はしづらいし、広がりづらい。アセクシャルだと言ってもみんな人間なんだから、性格も違えば状況も違うから、この作品みたいに他の作品にももっといろんな人がいてほしいと思う。だから、アセクシャルの人がたくさん出てくる作品があってほしいと常々思っている。
シフランは人に触られるの好きじゃないみたいだけど、親しい人にハグをしたり、髪をとかしたりするのは好きだと思ってる感じだろうか。私は人に触られるのいやだし、近い距離に人がいると緊張するので、その辺も人それぞれだなと思った。

シフランが接触に慣れていないのは、そういう文化で育ったから?それとも、接触の多い文化だったけど、育った環境が過酷だったから?シフランが自分をきらっているのはどうして?過去に何かあったの?シフランの育った地域の文化はどうだったの?星や宇宙を信仰しているの?どうしてみんな忘れてしまったの?何が起こったの?
この疑問に答えがあると思っていたけど、このゲームでは明らかにならなかった。この分からなさはシフランの感じている自分の過去の分からなさだし、その分からなさがシフランの自信のなさや不安につながっているのかもしれない。それに、その疑問すら忘れてしまうかもしれないという不安の中にいるから余計に。
そもそも、忘れ去られた島についてはこのゲームの主題ではないから、語られなくても問題ない。でも、このあたりのことをもっと知りたかった。

ループという存在に関してももっと知りたかったんだけど、どうやらゲーム内で特定の条件を満たすとループともっと話ができるようなので、ループに関しては答えが用意されているのかもしれない。

結末があっさりしていると思ったのは、もうひとひねりあるかなと思っていたから。シフランのみんなと一緒にいたいという望みでループしているのは中盤くらいからわかるように示唆されていたから、プレイヤーが気づかないような別の理由が噛んでいると思っていた。でも、その示唆どおりシフランの望みがループの理由でそれ以外の要因は特になさそうだったから、拍子抜けしたところはある。
シフランは臆病だし、相手に気遣いができるから逆に自分の望みは言えなくなって、相手の顔色を窺ってもっと怖くなる。そういう不安の堂々巡りはよく起こることだし。だから、最後の最後まで自分のしたいことを言い出せなくて、ため込んで爆発した部分は納得できるなと思った。

キャラクターの絵がかわいらしくデフォルメされているので、キャラクターの年齢がわかりづらいんだけど、ミラベルとイザボーは20代前半、シフランは20代後半か30代前半、オディールは30代後半か40代だろうか。

最初から最後までずっとキャラクターたちが話しているのを見ていて、みんな自分の感情を言葉にするのがうまいなと思った。こんなに自分の思ったことを言葉にできるのってすごいと思う。特にシフランが自暴自棄でひどいことを言ったときやそのあとのエピローグ部分は、こんな冷静に自分の気持ちと起こったことを切り分けて話せるものかなと思った。でも、それだけじっくり考えて話そうとするのは、みんなシフランのことが好きで大事にしたいと思っているからなんだろうと思った。それに、そうやって相手のことを考えることができる人たちだから、シフランはこの人たちと一緒にいたいと思ってるんだろうとも思った。